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MR.BLOOKS [映画]

順風満帆の人生を送っている男の、もうひとつの顔

穏やかな笑みを絶やさない紳士アール・ブルックスはふたつの顔を持つ。ひとつは成功した大物実業家で、豪奢な屋敷に住み、美人の妻と大学生の一人娘を愛する家族思いの顔。そしてもうひとつは見ず知らずの人間を残忍に殺す連続殺人鬼の顔だ。二つの顔を持つ男の二重の生活、そして二重の人格。複雑な内面を持つこの男は他人の心を読むことに長けている。演じているケビン・コスナーは静かな微笑みの中にダークな匂いを微かに漂わせ、それほど表情を変えないのがかえってリアルだ。

ニュースを見れば毎日毎日、殺人事件が起きている。どうして、そんなことばかり続くのか、よくわからない。放っておけば、いつか必ず人は死ぬ。それをなぜ殺すのだろう? 殺したら殺した瞬間から腐敗が始まるし、死体だって片付けなければならない。生きていれば自分で歩いて、どこかへ行ってしまうだろうに。

殺人鬼の動機はよくわからない。ただ、鳥の雛と同じように人間にも刷り込みがあるのだろうか。この映画の中でブルックスの一人娘もまた、殺人鬼の片鱗を見せる。子どもは身近な人間の潜在意識を感じる能力が高い。娘は幼い時に、父親の瞳に浮かぶ殺人鬼の歪んだ顔を覗き見てしまったのかもしれない。闇の中の鮮明な像。そして、一瞬のうちに刷り込みは完了する。

ブルックスは殺人中毒という依存症から逃れようと誓いを立てる。例えばアルコール依存症から抜け出すには、死ぬまで一滴も飲んではいけないという。一滴でも口にすれば快感が体中を駆けめぐり、それをまた味わいたくなってしまうからだ。ブルックスは2年間誓いを守っていたが、誘惑に負けてしまう。自分をコントロールすることはとても難しい。そして、自分自身の姿を的確に捉えることも難しい。ブルックスの傍らにはぴったりと寄り添う邪悪な陰の存在がある。「欲望を抑えることなんて必要ないさ。さあ、お楽しみを始めようじゃないか」ブルックスはその声に弱々しく抗ってみせるだけで、振り切ることはできない。見下げ果てた自分の姿をせめて家族に知られないうちに消してしまおうと決意するが、それさえもままならない。消えることも、人間らしく生きることもできず、彷徨い続けるしかないブルックス。わが身を呪いながら生きるなんてなんだかヴァンパイアみたいだけど、そこに悲壮感があまり感じられないのは罪悪に対する意識が薄いせいだろうか。罪悪感がない人間は、愚かな虫みたいだ。

(5/24日より公開〜)


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